場所と物語

変わる街と/河野慎平

東京の中でも、当時の記憶が残ったまま15年振りに訪れる街というのは数少ないかもしれない。
自分にとって「新大久保」は、大学生の4年間、バイトのために通った街だった。

稼げるという理由で深夜のシフトに入っていて、夜中2時まで営業して、朝5時からオープンする。

お酒もドリップコーヒーも提供していたお店で、周りに夜中/早朝やっている店も少なかったおかげで繁盛していて、
夜は新宿で飲んだ流れで訪れるカップルや団体客、風俗関係や、当時は怖い系の方もぞろぞろ、
早朝も仕事や飲んだ帰りの夜の住人のみなさん、そして出勤前のサラリーマン。

人を通して朝と夜の街の顔が見れて、常連さんの顔とお決まりのオーダーを覚えるようになって、会話を交わすことも多くて楽しかった。

さて、そのお店は数年前に閉店し、今は韓国一色の街に溶け込むように、
韓国料理屋さんに変わっていた。

平日も休日も、当時では考えられないくらいの人で賑わっている街になった。

最初は戸惑ったけど、それからたまたま仕事で何回か訪れるようになり、
活気のある街に元気づけられるような気持ちになっていった。

当時の自分のように、この街にいて、
いつものように言葉を交わす人たちの日常が増えていると思ったら、
そう思える街をまたどこかにできたらいいなと思った。